庭の雨水が隣地に流れるとき、条文は何を禁じているのか
庭の雨水が隣地に流れるとき、民法218条が禁じているのは雨水を隣地に注ぐ構造の工作物を設けることで、流れ込む結果そのものではありません。撤去や更地化で水の流れが変わる話も含めて、民法・盛土規制法・下水道法と自治体の指針から並べます。
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庭の水はけは、隣との関係と、自分の敷地の安全の両方にかかる話です。条文は意外と限られたことしか定めていません。書いてあることと、書いていないことを分けます。
このページの結論
- 民法218条が禁じているのは「雨水を隣地に注ぐ構造の工作物を設ける」ことで、雨水が流れ込むという結果そのものを禁じた条文は見つかりませんでした
- 受忍限度(どこまで我慢すべきか)を書いた一次情報もありません(当サイトは裁判例を確認していません)
- 一方で、撤去・更地化で水の流れが変わることは、自治体の技術指針が実際に注意している話です
- 雨水浸透ますは、土地の条件で設置できないことがあります
民法は「工作物を設けること」を禁じている
水に関する相隣関係の条文を、原文のまま並べます。
民法218条(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)
土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。
民法214条(自然水流に対する妨害の禁止)
土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
この2つは、向きが違います。 218条は水を出す側の工作物を禁じ、214条は水を受ける側の妨害を禁じています。
条文が答えていないこと
- 雨水が流れ込むという「結果」そのものを一般的に禁じた条文は、民法の相隣関係の規定(214条から221条)の中には見つかりませんでした。 218条の対象は「そういう構造の工作物を設けること」です
- 218条に反する工作物がある場合に、撤去や作り替えを請求できるか、損害賠償が認められるかは、条文に書かれていません
- どの程度の流入なら我慢すべきか(受忍限度)は、条文にも、今回集めた自治体の資料にも書かれていません
- 庭の地面の形を変えて水の流れ方が変わった場合が214条の「妨げてはならない」に当たるかも、条文には書かれていません
- したがって、隣地から流れ込む水を土留めや盛土で止めてよいかも、条文からは決まりません
自治体の窓口としては、横手市がFAQで民法218条を引き、雨水を直接隣地に注ぐ構造の工作物について改善を「要求することができます」と回答しています。
(出典:秋田県横手市「よくある質問 隣の家の屋根から雨水が流れ込んできます」/確認日 2026-09-29)これは市の一般的な回答であって、個別事案の結論ではありません。
通水・工作物の使用についての条文
他にも、庭の工事で出てくる可能性のある条文があります。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 215条 | 水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したとき、高地の所有者が自己の費用で必要な工事をすることができる |
| 216条 | 他の土地の貯水・排水・引水の工作物の破壊または閉塞により自分の土地に損害が及ぶ(おそれがある)場合、その土地の所有者に修繕・障害の除去をさせ、必要があるときは予防工事をさせることができる |
| 217条 | 215条・216条の費用負担について別段の慣習があるときはその慣習に従う |
| 219条 | 溝・堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するとき水路又は幅員を変更してはならない |
| 220条 | 低地への通水は「その高地が浸水した場合にこれを乾かすため」または「自家用若しくは農工業用の余水を排出するため」の2つの目的の場合。行き先は「公の水流又は下水道に至るまで」、方法は「低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない」 |
| 221条 | 高地・低地の所有者が設けた工作物を使用でき、利益を受ける割合に応じて設置及び保存の費用を分担しなければならない |
220条は「場所」ではなく「目的」で限定されている
220条が低地への通水を認めるのは、2つの目的の場合だけです。庭に降った雨水が「自家用若しくは農工業用の余水」に当たるかは、条文の文言からは判断できません。
損害が生じた場合の一般規定として民法709条(不法行為)と717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)があります。717条1項は工作物の占有者が第一次的に責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が負う構造です。
(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法(明治二十九年法律第八十九号)第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)」/確認日 2026-09-29)境界そのものがはっきりしない場合の話は、別ページにまとめています。
行政が動くのは「崖崩れ・土砂の流出」の話
盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)には排水施設の規定があります。ただしこの法律の「災害」の範囲が限定されています。
盛土規制法2条5号
この法律でいう「災害」とは、崖崩れ又は土砂の流出による災害
つまり、隣地への雨水流入そのものを理由に行政が命令できる規定は、この法律の中には見つかりませんでした。
そのうえで、条文には次の規定があります。
- 13条1項: 宅地造成等工事規制区域内の工事は、政令で定める技術的基準に従い「擁壁、排水施設その他の政令で定める施設」の設置その他必要な措置が講ぜられたものでなければならない
- 22条1項: 同区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、宅地造成等に伴う災害が生じないよう「その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない」(努力義務)
- 23条1項: 改善命令の対象は「擁壁等の設置若しくは改造、地形若しくは盛土の改良又は土石の除却のための工事」
- 23条2項: 土地所有者等以外の者の行為によって1項の災害のおそれが生じたことが明らかな場合、その行為をした者(その行為が「隣地における土地の形質の変更」であるときはその土地の所有者を含む)に対して工事を命じられる
23条2項は「隣地の造作が原因のとき」を想定している
隣地で土地の形質が変えられたことが原因で崖崩れ・土砂の流出のおそれが生じた場合について、条文に規定があります。
ただし対象は2条5号の「崖崩れ又は土砂の流出による災害」に限られます。 雨水が流れ込んで困る、というだけでは、この条文の射程には入りません。
規制区域は2種類ある
ここは見落としやすい点です。
| 区域 | 根拠 | 手続き |
|---|---|---|
| 宅地造成等工事規制区域 | 法13条 | 技術的基準に従った措置 |
| 特定盛土等規制区域 | 法26条(同区域以外の土地の区域を知事が指定) | 法27条1項により、特定盛土等の工事は着手する日の30日前までに工事の計画を都道府県知事に届け出なければならない |
片方だけを調べると、郊外の実家では取りこぼします。 区域指定は都道府県・指定都市・中核市が公示するもので、自分の土地が区域内かは個別に確認する必要があります。
規模の要件
施行令3条が定める、規制対象となる土地の形質の変更の規模です。
- 盛土で高さ1メートルを超える崖を生ずるもの
- 切土で2メートルを超える崖を生ずるもの
- 盛土と切土を同時にして2メートルを超える崖を生ずるもの
- 高さ2メートルを超える盛土
- 面積500平方メートルを超える盛土又は切土
施行令1条は「崖」を「地表面が水平面に対し三十度を超える角度をなす土地で硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のもの」と定義しています。
(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第1条・第3条・第16条」/確認日 2026-09-29)庭の片付けが対象になるかは、現地次第
植栽や庭石・ブロックの撤去、土の移動が許可・届出の対象になるかは、この規模要件に達するかで決まります。現地の高さと面積次第で、一般論としては言えません。
判断が必要になりそうな規模(斜面の造作、1メートルを超える段差、500平方メートル超)に触れる場合は、工事の前に自治体の担当課に確認してください。
排水施設の技術的基準
施行令16条1項は、盛土または切土をする場合で地表水等により崖崩れ又は土砂の流出が生ずるおそれがあるときに、その地表水等を排除できるよう排水施設を設置することとし、6要件を列挙しています——堅固で耐久性のある構造、耐水性の材料と漏水を最少限度とする措置、管渠の勾配及び断面積、暗渠部分のます又はマンホールの設置箇所、蓋、そしてますの底の深さ15センチメートル以上の泥溜め。
16条1項2号ただし書は、崖崩れ又は土砂の流出の防止上支障がない場合に限り、専ら雨水その他の地表水を排除すべき排水施設を「多孔管その他雨水を地下に浸透させる機能を有するもの」とすることができるとしています。
国土交通省の盛土等防災マニュアルも、開発事業等について「開発事業等実施地区及び周辺に溢水等の被害が生じないよう」治水・排水対策を実施するものとし、排水施設の設置を検討する箇所として、のり面の下端、のり面周辺から流入し又はのり面を流下する地表水等を処理するために必要な箇所、湧水又は湧水のおそれがある箇所などを挙げています。
(出典:国土交通省「盛土等防災マニュアル」/確認日 2026-09-29)同マニュアルは「土壌内の水分量の増加が盛土又は斜面の崩壊を引き起こすおそれがあることを踏まえ、盛土又は斜面全体の安定性について事前に十分な検討を行い、災害の防止上支障がないことを確認する必要がある」とも書いています。
撤去・更地化で、水の流れは変わる
庭じまいの文脈でいちばん効く記述が、横浜市の技術指針にあります。
横浜市「がけ地に近接する建築物の安全確保に関する技術指針(がけ上編)」第9章
建築物の建替え時等に既存建築物を解体すると敷地が窪んで雨水が敷地全体に浸透しやすい状態になってしまうことが多く、がけに影響を与え崩れるケースも見受けられる
そのうえで、雨水が浸透しないよう養生を行う等の注意を求めています。
同じ指針は、浸透施設についても注意しています。
- がけに近接して浸透枡を設けると浸透した水によりがけ崩れを誘発することになるとして、そのような敷地で浸透枡を採用することは避けなければならない
- 【解説】(2): 「集中豪雨等で、地表面から一時的に大量に雨水が浸透することにより、土の自立性が急激に低下し、がけ崩れに結びつくことが多い」
- がけ上部宅地の地表面は「出来るだけコンクリート土間等の不透水層で覆うように配慮する」
- 斜面下敷地のように周囲の地形から宅地へ水が集まりやすい場合には排水施設を設け、流下した雨水等を既存擁壁等のがけ側へ流さないように計画する
- がけ上部宅地の排水勾配は、原則としてがけ側が水上となる水勾配とする
この指針の射程
横浜市の指針で、全国の基準ではありません。 対象は建築行為で、庭の片付けだけを対象にしたものでもありません。
ただし「解体すると敷地が窪んで雨水が浸透しやすくなる」という現象そのものは、撤去・更地化を考えるなら知っておいたほうがよい内容です。がけや擁壁に近い敷地なら、業者に必ず伝えてください。
土間コンクリートにするかどうかの整理は、別ページにあります。
→ 庭をコンクリートにするかどうかの検討 → 防草シートと砂利という選択肢
雨水の行き先は、下水道の方式で決まる
下水道法2条1号
「下水」とは「生活若しくは事業(耕作の事業を除く。)に起因し、若しくは付随する廃水(以下「汚水」という。)又は雨水」
雨水も下水に含まれます。
10条1項は、公共下水道の供用が開始された排水区域内の土地について、建築物の敷地である土地はその建築物の所有者が排水設備を設置しなければならないとしています。
そして、分流地区で汚水と雨水を分けるのは、自治体の「お願い」ではなく国の技術上の基準です。
下水道法施行令8条4号
分流式の公共下水道に下水を流入させるために設ける排水設備は、汚水と雨水とを分離して排除する構造とすること。
同8条3号ただし書は「雨水を排除すべきものについては、多孔管その他雨水を地下に浸透させる機能を有するものとすることができる」、同10号は雨水ますの深さ15cm以上の泥ためを定めています。
自治体が実際に案内していること
東京都下水道局は、分流地区で屋外流しを設置する場合の接続先は汚水管であり、「地表に降った雨や雨どいからの雨水が屋外流しへ流入しない構造にするようお願いいたします」としています。理由は、汚水だけを流すはずの下水道管に雨水が流れ込むと管の能力を超えた水が行き場を失い、家庭内のますやマンホールから溢れるためです。
(出典:東京都下水道局「分流地区における雨水の排水について」/確認日 2026-09-29)静岡市は分流式区域について、雨どいからの雨水の行き先を「雨水ます」「U字側溝」「水路」のいずれかに流すか「敷地内地面」に浸透させるよう案内し、誤接続の原因として「家の屋根や庭への降雨」が汚水管に流入している例を挙げています。
(出典:静岡県静岡市「雨水の誤接続について」/確認日 2026-09-29)自分の家がどちらかは、調べないと分からない
自分の家の前の下水道が合流式か分流式か、雨水を受ける公共下水道があるかは地区ごとに違います。 静岡市のように同じ市内に合流式と分流式の両方がある場合もあります。
条文からは決まりません。市区町村の下水道担当に確認してください。
雨水浸透ますは、土地の条件で設置できないことがある
「浸透させればよい」とは限りません。複数の自治体が、同じ方向の条件を公表しています。
設置できない・対象にならない条件の例
- 世田谷区(助成の主な条件): 「急傾斜地であったり、隣地との段差があったりしないこと」「地下水位が1メートル以上あること」「四方に、十分なスペースがあること」
- 東京都下水道局の23区一覧(共通条件): 「地滑り、がけ崩れのおそれのある場所は禁止」「土壌汚染のおそれのある場所は禁止」
- 新潟市: 「浸透ますは、地盤の段差が大きい区域(場所)での設置はできません」
- 福岡市: 「地形・地質等により雨水を浸透させることが不適当な区域」を対象地域から除く
- 船橋市: 「市が雨水の浸透が適正とする場所」に限って補助し、設置可能区域図を公表
横浜市の技術指針も、がけに近接して浸透枡を設けることは避けなければならないとしています。「浸透ますを付ければ解決」という前提で計画すると、そもそも設置できない土地があります。
浸透ますは隣地への流出を止めるものではない
「浸透ますを設置すれば隣地への流出が止まる」と書いた資料は見つかりませんでした。
自治体の資料が説明しているのは、河川や下水道への流出の抑制と浸水被害の軽減です。隣との関係を解決する手段として案内されているわけではありません。
助成は「工事の前」に手続きする
助成制度がある場合、順番を間違えると使えません。
- 世田谷区: 「事後申請は助成対象外」
- 福岡市: 「購入・設置の前に申請が必要」で、申請期間は毎年度4月1日から12月15日・予算の範囲内で先着順
- 新潟市: 事前協議書を出して「助成対象のお知らせ」を受けた後に購入したものが対象
- 船橋市: 年度内の設置完了が必要で、交付額が予算額に達した場合は受付終了
自治体が公表している助成上限額は、その自治体が定めた助成の上限であって、工事費の相場ではありません。
上に挙げた助成は、世田谷区・東京都下水道局の23区一覧・新潟市・船橋市・福岡市の5件です。この5件から、全国的な傾向や、助成がある自治体の割合は分かりません。実家の市区町村に助成があるかは、下水道担当に確かめてください。
新築・改築のときは、別に届出が要る自治体もある
世田谷区の「雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」(平成22年7月制定)の対象となる行為は、建物の新築・改築(仮設建築物を除く)、公園・道路・私道・鉄道・高速道路・駐車場の新設・改修、都市計画法に規定する開発行為、これらに類する行為で治水対策を必要とするもの、とされています(敷地面積150平方メートル未満の小規模民間施設の新築又は改築は計画書の提出は不要)。
業者に頼むときに確認すること
業者に確認したいこと
- いま雨水がどこへ流れているか。雨どい・地面それぞれの行き先を現地で確認してもらう
- 自分の家の地区は合流式か分流式か。雨水を受ける公共下水道・側溝・水路があるか
- (分流地区なら)雨水が汚水管に入っていないか(誤接続がないか)
- 工事後に、隣地側へ向かう勾配ができないか
- (がけ・擁壁が近い場合)その存在を伝えたか。がけ側へ水を流さない計画になっているか
- (撤去・更地化する場合)解体後に敷地が窪んで雨水が浸透しやすくならないか。養生をどうするか
- 浸透ますを提案された場合、自治体の設置条件(急傾斜地・隣地との段差・地下水位・スペース)を満たすか
- 自治体の助成を使う場合、申請は工事の前に出すことになっているか
- 斜面の造作・1メートルを超える段差・500平方メートル超の造成に触れないか(盛土規制法の規模要件)
費用が変わる条件
- 面積と、必要な勾配をつけるための土の移動量
- 排水の行き先(既存の雨水ます・側溝・水路があるか、新設が必要か)
- 浸透施設を設けるかどうか、設けられる土地かどうか
- 土間コンクリートなど不透水の仕上げにするかどうか
- がけ・擁壁が近く、養生や別の計画が必要になるか
- 出た土を敷地内で使うか、外へ出すか
見積書の比べ方は、別ページにまとめています。
条文と資料からは決まらないこと
- 庭の雨水が隣に流れることが「違法」かどうか、どこまでなら我慢すべきか
- 隣から流れ込む水を土留めや盛土で止めてよいか
- 自分の実家の敷地が盛土規制法の規制区域内か、特定都市河川流域内か
- 庭の片付けが盛土規制法の許可・届出の対象になるか
- 自分の庭に雨水浸透ますを設置できるか
いずれも現地と区域指定を確認しないと決まりません。 隣との話になっている場合は、条文だけでは結論が出ないため、市区町村の相談窓口(環境・下水道・建築のいずれか)に先に当たるほうが早いです。
よくある質問
庭の雨水が隣に流れ込むのは違法ですか
隣から雨水が流れ込んでくるのを、土留めで止めてよいですか
隣の家の雨どいがこちらに向いています。直してもらえますか
建物を解体して更地にすると、水の流れは変わりますか
雨水浸透ますを付ければ隣への流出は止まりますか
確認した情報源
制度や料金は地域と時期で変わります。掲載しているのは確認日時点の内容です。実際の手続きは、 該当する自治体・事業者の最新の案内で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法 第214条〜第222条(水に関する相隣関係)」
214条(自然水流に対する妨害の禁止)「土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。」218条(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)「土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。」215条は、水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したとき、高地の所有者が自己の費用で必要な工事をすることができるとする。216条は、他の土地に貯水・排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合に、その土地の所有者が当該他の土地の所有者に、工作物の修繕もしくは障害の除去をさせ、必要があるときは予防工事をさせることができるとする。217条は215条・216条の費用負担について別段の慣習があるときはその慣習に従うとする。219条は溝・堀その他の水流地の所有者について、対岸の土地が他人の所有に属するときは水路又は幅員を変更してはならないとする。220条は低地への通水を「その高地が浸水した場合にこれを乾かすため」または「自家用若しくは農工業用の余水を排出するため」の2つの目的の場合に認め、行き先を「公の水流又は下水道に至るまで」、方法を「低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない」とする。221条は、自分の所有地の水を通過させるために高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用でき、利益を受ける割合に応じて設置及び保存の費用を分担しなければならないとする。222条は堰の設置及び使用について定める。
適用範囲:全国。2026-09-29に e-Gov法令データ(129AC0000000089)から取得して照合した現行版。/確認日 2026-09-29
注意:218条が禁じているのは「直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物」を設けることで、雨水が流れ込むという結果そのものを一般的に禁じた条文は今回確認した法令の中に見つからなかった。 218条に反する工作物がある場合に撤去や作り替えを請求できるか、損害賠償が認められるかも条文に書かれていない。どの程度の流入なら我慢すべきか(受忍限度)も、今回集めた一次情報のどれにも書かれていない(当サイトは裁判例を確認していない)。庭に降った雨水が220条の「自家用若しくは農工業用の余水」に当たるかも条文の文言からは判断できない。庭の地面の形を変えて水の流れ方が変わった場合が214条の「妨げてはならない」に当たるかも条文には書かれていない。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法(明治二十九年法律第八十九号)第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)」
1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたとき、その工作物の占有者が賠償責任を負い、ただし占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が賠償しなければならないと定める。2項は1項を「竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合」に準用する。3項は他に責任を負う者があるときの求償権を定める。
適用範囲:全国。2026-09-29時点で施行済みの版で確認。/確認日 2026-09-29
注意:条文が責任の要件としているのは「栽植又は支持の瑕疵」であって、「手入れをやめたこと」が直ちに瑕疵に当たるとは書かれていない。瑕疵の有無・因果関係・損害額はいずれも個別の事実認定で、この条文だけを根拠に「倒木すれば必ず賠償責任を負う」とは書けない。判例・裁判例は今回一件も確認していない。台風など自然力が加わった場合の扱いも条文にない。占有者と所有者が別人のときに誰が占有者になるかも条文からは判断できない。
- 秋田県横手市「よくある質問 隣の家の屋根から雨水が流れ込んできます」
民法218条を引いたうえで、雨水を直接隣地に注ぐ構造の工作物について改善を「要求することができます」と回答している。
適用範囲:横手市が市民向けに出しているFAQ。/確認日 2026-09-29
注意:市の一般的な回答であって、個別事案の結論ではない。 民法218条の条文自体に、撤去や作り替えを請求できるという効果は書かれていない。当サイトは裁判例を確認していないため、どういう場合に請求が認められるかは書けない。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)第2条・第13条・第22条・第23条・第26条・第27条」
2条5号は、この法律でいう「災害」を「崖崩れ又は土砂の流出による災害」と定義する。13条1項は、宅地造成等工事規制区域内で行われる工事について、政令で定める技術的基準に従い「擁壁、排水施設その他の政令で定める施設」の設置その他必要な措置が講ぜられたものでなければならないとする。22条1項は、同区域内の土地の所有者・管理者・占有者に、宅地造成等に伴う災害が生じないよう「その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない」という努力義務を課す。23条1項の改善命令は「擁壁等の設置若しくは改造、地形若しくは盛土の改良又は土石の除却のための工事」を対象とする。23条2項は、土地所有者等以外の者の行為によって同条1項の災害のおそれが生じたことが明らかな場合に、その行為をした者(その行為が「隣地における土地の形質の変更」であるときはその土地の所有者を含む)に対して工事を命じられるとする。規制区域は2種類あり、26条の特定盛土等規制区域(宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域を知事が指定)では、27条1項により特定盛土等に関する工事は「当該工事に着手する日の三十日前までに工事の計画を都道府県知事に届け出なければならない」。
適用範囲:全国。2026-09-29に e-Gov法令データ(336AC0000000191)から取得して照合した現行版。/確認日 2026-09-29
注意:この法律の「災害」は崖崩れ又は土砂の流出による災害に限られる(2条5号)。したがって23条2項も、隣地の造作が原因のときに命令の余地がある規定ではあるが、隣地への雨水流入そのものを理由とする命令の規定は、今回確認した法令には見つからなかった。 規制区域は宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の2種類あり、片方だけを案内すると郊外では取りこぼす。 区域指定は都道府県・指定都市・中核市が公示するもので、自分の土地が区域内かは個別に確認する必要がある。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第1条・第3条・第16条」
1条は「崖」を「地表面が水平面に対し三十度を超える角度をなす土地で硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のもの」と定義する。3条は規制対象となる土地の形質の変更の規模を、盛土で高さ1メートルを超える崖を生ずるもの、切土で2メートルを超える崖を生ずるもの、盛土と切土を同時にして2メートルを超える崖を生ずるもの、高さ2メートルを超える盛土、面積500平方メートルを超える盛土又は切土、と定める。16条1項は、盛土または切土をする場合で地表水等により崖崩れ又は土砂の流出が生ずるおそれがあるときに、その地表水等を排除できるよう排水施設を設置することとし、堅固で耐久性のある構造、耐水性の材料と漏水を最少限度とする措置、管渠の勾配及び断面積、暗渠部分のます又はマンホールの設置箇所、蓋、ますの底の深さ15センチメートル以上の泥溜めの6要件を列挙する。16条1項2号ただし書は、崖崩れ又は土砂の流出の防止上支障がない場合に限り、専ら雨水その他の地表水を排除すべき排水施設を「多孔管その他雨水を地下に浸透させる機能を有するもの」とすることができるとする。
適用範囲:全国。2026-09-29に e-Gov法令データ(337CO0000000016)から取得して照合した現行版。/確認日 2026-09-29
注意:庭の片付け(植栽や庭石・ブロックの撤去、土の移動)が許可・届出の対象になるかは、3条の規模要件に達するかで決まり、現地の高さと面積次第。一般論としては言えない。
- 国土交通省「盛土等防災マニュアル」
Ⅹ Ⅱ·1·1は、開発事業等について「開発事業等実施地区及び周辺に溢水等の被害が生じないよう」治水・排水対策を実施するものとする。Ⅹ Ⅱ·2·1は排水施設の設置を検討しなければならない箇所として8つを挙げ、のり面の下端、のり面周辺から流入し又はのり面を流下する地表水等を処理するために必要な箇所、湧水又は湧水のおそれがある箇所、渓流等の地表水や地下水が流入する箇所などを含める。Ⅹ Ⅱ·3·6·1は「土壌内の水分量の増加が盛土又は斜面の崩壊を引き起こすおそれがあることを踏まえ、盛土又は斜面全体の安定性について事前に十分な検討を行い、災害の防止上支障がないことを確認する必要がある」とする。
適用範囲:盛土規制法に基づく工事の技術的な手引き。/確認日 2026-09-29
注意:原文の語は「周辺」であって「隣接する周辺」ではない。 開発事業等を対象とした手引きで、個人宅の庭の片付けに同じ検討を義務づけるものではない。
- 神奈川県横浜市「がけ地に近接する建築物の安全確保に関する技術指針(がけ上編)第9章 排水計画」
がけに近接して浸透枡を設けると浸透した水によりがけ崩れを誘発することになるとして、そのような敷地で浸透枡を採用することは避けなければならないとする。【解説】(2)に「集中豪雨等で、地表面から一時的に大量に雨水が浸透することにより、土の自立性が急激に低下し、がけ崩れに結びつくことが多い」とあり、がけ上部宅地の地表面は「出来るだけコンクリート土間等の不透水層で覆うように配慮する」とする。建築物の建替え時等に既存建築物を解体すると敷地が窪んで雨水が敷地全体に浸透しやすい状態になってしまうことが多く、がけに影響を与え崩れるケースも見受けられると注意し、雨水が浸透しないよう養生を行う等の注意を求める。斜面下敷地のように周囲の地形から宅地へ水が集まりやすい場合には排水施設を設け、流下した雨水等を既存擁壁等のがけ側へ流さないように計画するとし、がけ上部宅地の排水勾配は原則としてがけ側が水上となる水勾配とするとしている。
適用範囲:横浜市。がけ地に近接する建築物の安全確保のための技術指針。/確認日 2026-09-29
注意:横浜市の指針で、全国の基準ではない。 対象は建築行為で、庭の片付けだけを対象にしたものではない。ただし「既存建築物を解体すると敷地が窪んで雨水が浸透しやすくなる」という記述は、撤去・更地化を考える場面に直接かかる。原文の語は「不透水層」で、「不浸透層」に置き換えてはいけない。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「下水道法 第2条・第10条/下水道法施行令 第8条」
法2条1号は「下水」を「生活若しくは事業(耕作の事業を除く。)に起因し、若しくは付随する廃水(以下「汚水」という。)又は雨水」と定義しており、雨水も下水に含まれる。10条1項は、公共下水道の供用が開始された排水区域内の土地について、建築物の敷地である土地はその建築物の所有者が排水設備を設置しなければならないとする。10条3項が委任する技術上の基準は下水道法施行令(昭和三十四年政令第百四十七号・https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000147 )8条にあり、4号が「分流式の公共下水道に下水を流入させるために設ける排水設備は、汚水と雨水とを分離して排除する構造とすること。」と定める。同8条3号ただし書は「雨水を排除すべきものについては、多孔管その他雨水を地下に浸透させる機能を有するものとすることができる」、同10号は雨水ますの深さ15cm以上の泥ためを定める。
適用範囲:全国。2026-09-29に e-Gov法令データ(333AC0000000079/334CO0000000147)から取得して照合した現行版。/確認日 2026-09-29
注意:分流地区で汚水と雨水を分けるのは、自治体の「お願い」ではなく下水道法10条3項+施行令8条4号の技術上の基準である。ただし自分の家の前の下水道が合流式か分流式か、雨水を受ける公共下水道があるかは地区ごとに違い、この条文だけでは決まらない(同じ市内に合流式と分流式の両方がある場合もある)。
- 東京都下水道局「分流地区における雨水の排水について」
分流地区で屋外流しを設置する場合の接続先は汚水管であり、「地表に降った雨や雨どいからの雨水が屋外流しへ流入しない構造にするようお願いいたします」とする。理由として、汚水だけを流すはずの下水道管に雨水が流れ込むと管の能力を超えた水が行き場を失い、家庭内のますやマンホールから溢れることを挙げる。
適用範囲:東京都の分流地区。/確認日 2026-09-29
注意:求められているのは「屋外流しへ流入しない構造」で、宅地全般に「雨水を流入させない構造」を求めた記述ではない。表現は「お願いいたします」で、罰則の有無はこのページには書かれていない(ただし分流式の汚水・雨水分離自体は下水道法施行令8条4号の技術上の基準)。
- 静岡県静岡市「雨水の誤接続について」
分流式区域について、雨どいからの雨水は「雨水ます」「U字側溝」「水路」のいずれかに流すか「敷地内地面」に浸透させるよう案内し、誤接続の原因として「家の屋根や庭への降雨」が汚水管に流入している例を挙げている。
適用範囲:静岡市の分流式区域。/確認日 2026-09-29
注意:静岡市には合流式と分流式の両方の区域があり、自分の家がどちらかはこのページからは分からない。 行き先の選択肢(雨水ます/U字側溝/水路/敷地内浸透)も、その土地に何があるかで変わる。
- 東京都世田谷区「雨水浸透施設設置助成」
助成の主な条件に「急傾斜地であったり、隣地との段差があったりしないこと」「地下水位が1メートル以上あること」「四方に、十分なスペースがあること」を挙げる。手続きは事前申請で、「事後申請は助成対象外」と明記している。区の雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱(平成22年7月制定)の対象となる行為は、建物の新築・改築(仮設建築物を除く)、公園・道路・私道・鉄道・高速道路・駐車場の新設・改修、都市計画法に規定する開発行為、これらに類する行為で治水対策を必要とするもので、敷地面積150平方メートル未満の小規模民間施設の新築又は改築は計画書の提出は不要とされている(https://www.city.setagaya.lg.jp/03666/4630.html )。
適用範囲:世田谷区の助成制度と指導要綱。/確認日 2026-09-29
注意:助成の上限額は区が定めた助成の上限であって、工事費の相場ではない(当サイトは金額を書かない)。設置できるかどうかは急傾斜地・隣地との段差・地下水位・スペースなどで区が個別に判断しており、一般論では言えない。助成があるのは今回確認した5件(世田谷区・東京都下水道局の23区一覧・新潟市・船橋市・福岡市)だけで、全国的な傾向や助成のある自治体の割合は言えない。
- 東京都下水道局「雨水浸透施設設置助成制度(23区一覧)」
23区の助成制度の一覧。共通条件として「地滑り、がけ崩れのおそれのある場所は禁止」「土壌汚染のおそれのある場所は禁止」を挙げている。
適用範囲:東京23区。/確認日 2026-09-29
注意:23区の一覧で、他の自治体の制度は載っていない。 条件・上限額は区ごとに違う。他の自治体でも同じ方向の条件が公表されている(新潟市「浸透ますは、地盤の段差が大きい区域(場所)での設置はできません」、福岡市は「地形・地質等により雨水を浸透させることが不適当な区域」を対象地域から除く、船橋市は「市が雨水の浸透が適正とする場所」に限って補助し設置可能区域図を公表)が、浸透ますを設置すれば隣地への流出が止まると書いた資料は見つからなかった——自治体の資料が説明しているのは河川や下水道への流出の抑制と浸水被害の軽減である。
