越境した枝を自分で切ってよいか|民法233条の条件
越境した枝を切ってよいかは、2023年4月1日の民法233条の改正で変わりました。条文が挙げる3つの場合、催告と相当の期間、隣地に入るときの条文上の手順、費用の扱いを、条文と法務省資料だけで整理します。
- 公開
- 内容を確認した日
- 読了目安
- 約7分
結論から書きます。条文の原則は「自分で切る」ではなく「木の所有者に切らせる」です。 自分で切り取れるのは、民法233条3項が挙げる3つの場合だけです。2023年4月1日の改正で変わったのは、この「自分で切り取れる場合」が条文に設けられた点です。
先に断っておくこと
当サイトは法律の専門家ではありません。ここに書けるのは、条文と法務省の資料に書いてあることだけです。あなたの庭のその枝を切ってよいかどうかの判断はしていません。横浜市・伊勢崎市・神戸市はいずれも、切取りを検討する場合は事前に弁護士・司法書士等へ相談するよう案内しています。
民法233条には何と書いてあるか
条文をそのまま読みます。見出しは「竹木の枝の切除及び根の切取り」です。(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法(明治二十九年法律第八十九号)第233条・第209条」/確認日 2026-09-29)
- 1項「土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」
- 2項「前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる」
- 3項「第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる」
- 4項「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」
1項が原則です。枝については、まず「切除させる」。自分で切るのは3項の場合に限られます。
根(4項)には、3項のような催告や「相当の期間」の要件が置かれていません。ただし、根を切ったあとに隣の木が枯れた場合の扱いは、条文にも法務省の資料にも書かれていません。根の側で公的資料がどこまで書いているかは庭木の根について確認できることに整理しています。
2023年4月1日に何が変わったのか
改正前の233条は2項しかありませんでした。1項は「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」で、いまある「土地の所有者は」という主語がありません。現行の2項と3項は、法務省の新旧対照条文上「(新設)」と表示されています。根に関する改正前の2項は、現行では4項に移されました。(出典:法務省「民法等の一部を改正する法律 新旧対照条文(民法・第一条関係)」/確認日 2026-09-29)
改正前にどうしていたかについて、法務省民事局の資料はこう書いています。「竹木の所有者が枝を切除しない場合には、訴えを提起し切除を命ずる判決を得て強制執行の手続をとるほかない」。つまり変わったのは、訴訟を経ずに自ら切り取れる場合が条文に設けられた点です。(出典:法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」/確認日 2026-09-29)
この改正は「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)によるもので、法務省の資料は相隣関係の見直しを「R5.4.1 施行」と記載しています。令和5年4月1日=2023年4月1日です。
自分で切ってよい3つの場合
3項が挙げているのは次の3つです。条文の文言のまま並べます。(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法(明治二十九年法律第八十九号)第233条・第209条」/確認日 2026-09-29)
- 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
- 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
- 急迫の事情があるとき
条文に書いていないこと
催告をどんな方法で行うのか(書面か口頭か、記録をどう残すか)は、条文に書かれていません。「急迫の事情」が何を指すかも条文にはありません。「相当の期間」の日数も同じです。
「相当の期間」について、法務省民事局の資料は「枝を切除するために必要な時間的猶予を与える趣旨であり、事案によるが、基本的には2週間程度と考えられる」と説明しています。(出典:法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」/確認日 2026-09-29) ただしこれは法務省がそう説明しているという水準の話で、条文が2週間と定めているわけではありません。
隣が空き家で、持ち主が分からないとき
2番目の場合に当たるかどうかを確かめる必要があります。横浜市は、法務局の窓口やインターネットで不動産の登記事項証明書を取得すれば、誰でも土地所有者を調査できる(有料)と案内しています。相続人の調査が必要な場合は弁護士等の専門家へ相談するよう案内しています。(出典:横浜市(住宅・空家対策)「越境した枝の切取りルールの改正について」/確認日 2026-09-29)
登記で分かるのは土地の所有者です
登記事項証明書で分かるのは土地(不動産)の所有者です。木を植えたのが借地人の場合など、竹木の所有者と土地所有者が一致しないときにどう特定するかは、今回確認した資料からは分かりませんでした。
木が何人かの共有になっているとき
2項は「竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる」と定めています。(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法(明治二十九年法律第八十九号)第233条・第209条」/確認日 2026-09-29)
法務省の資料は、共有者の一人から承諾を得れば、越境された土地の所有者などの他人がその共有者に代わって枝を切り取ることができるとしています。また3項一号(催告)で切り取る場合は「基本的に、竹木の共有者全員に枝を切除するよう催告する必要がある」とし、一部の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、その者との関係では2号に当たるので催告は不要としています。(出典:法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」/確認日 2026-09-29)
枝を切るために、隣の敷地に入ってよいか
民法209条1項は、土地の所有者が「必要な範囲内で、隣地を使用することができる」目的を三つ挙げており、その三号が「第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り」です。233条3項で自分で切れる場合には、そのために隣地を使うことが条文上の目的として書かれています。(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法(明治二十九年法律第八十九号)第233条・第209条」/確認日 2026-09-29)
ただし条文は、同時に次のことも定めています。
- 住家には居住者の承諾なく立ち入れない(1項ただし書)
- 使用の日時・場所・方法は、隣地の所有者および隣地を現に使用している者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない(2項)
- あらかじめ、目的・日時・場所・方法を隣地の所有者および隣地使用者に通知しなければならない。あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく通知することで足りる(3項)
- 隣地の所有者または隣地使用者が損害を受けたときは、償金を請求できる(4項)
通知の相手は所有者と、現に使っている人の両方です。法務省の資料は、この事前通知について、緊急性がない場合は通常は2週間程度の期間を置く必要があるとしています。(出典:法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」/確認日 2026-09-29)
権利があっても、押し通せるわけではない
法務省の資料は、隣地使用権について「隣地を使用できる権利がある場合も、一般的に、自力執行は禁止されているので、例えば、使用を拒まれた場合には、妨害禁止の判決を求めることになる」と説明しています。(出典:法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」/確認日 2026-09-29)
この説明の位置
この記載は法務省資料のうち隣地使用権(209条)のページに置かれたものです。枝の切取りそのもの(233条3項)について同じ説明があるかどうかは、今回確認した資料からは分かりませんでした。
費用は誰が負担するのか
条文には書かれていません。 法務省の資料は「枝が越境して土地所有権を侵害していることや、土地所有者が枝を切り取ることにより竹木の所有者が本来負っている枝の切除義務を免れることを踏まえ、基本的には、竹木の所有者に請求できると考えられる(民法703・709)」としています。(出典:法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」/確認日 2026-09-29)
ここも「考えられる」です。703条は不当利得の返還義務、709条は不法行為による損害賠償の一般規定であって、越境枝の切取り費用について書いた条文ではありません。「請求できる」と言い切った一次情報は見つかりませんでした。
市役所は切ってくれません
伊勢崎市は「市で越境枝のせん定や竹木を伐採することはできません。樹木の越境については、基本的には民事(相隣関係)の問題です」「伊勢崎市では、越境した竹木の枝を法的に切除可能かどうかは判断できませんのでご了承ください」と明記しています。雑草やツタの繁茂についても、市では刈り取れないとしています。(出典:伊勢崎市 建設部住宅課 空家対策係「【民法改正】越境した木の枝の切取りルールの変更」/確認日 2026-09-29) 横浜市も、市が越境した枝を切ることはできないとしています。(出典:横浜市(住宅・空家対策)「越境した枝の切取りルールの改正について」/確認日 2026-09-29)
一方で神戸市には、所有者不明などの理由で行政による指導等が行えない場合に、隣接する土地の所有者が越境竹木の切取りを行う際の費用を補助できる場合がある、という制度があります。自治体によって扱いが違います。お住まいの市区町村の案内で確認してください。
切りすぎに注意、という注意書き
横浜市は「適切な手順を踏めば、ご自身で対応可能ですが、必要以上に枝を切りすぎたり、竹木の所有者との思わぬトラブルになる可能性もあります」として、専門家への相談を勧めています。(出典:横浜市(住宅・空家対策)「越境した枝の切取りルールの改正について」/確認日 2026-09-29) 伊勢崎市も同じ趣旨に触れています。(出典:伊勢崎市 建設部住宅課 空家対策係「【民法改正】越境した木の枝の切取りルールの変更」/確認日 2026-09-29)
条文が認めているのは越境した枝を切り取ることです。どこまでが「越境した枝」かは、現場で判断することになります。隣から伸びてきたつるを枝と根のどちらとして扱うのかは、233条の条文に「つる」「蔓」という語が出てこないため条文からは決まりません。その整理は壁を覆ったツタ・つる植物の撤去にあります。
なお、切る枝に鳥の巣があった場合、巣の中の卵やヒナについては鳥獣保護管理法の側の話になります。民法233条の条件を満たしていることとは別に確かめる必要があるので、庭木を切る前に巣の中を見るもあわせてご覧ください。
業者に確認したいこと
- 越境しているのは枝か、根か(条文上の扱いが違います)
- 木の所有者は誰か。土地の登記で分かる人と一致しているか
- 催告をいつ、どんな方法で行ったか。記録は残っているか
- 切る作業のために隣地に入る必要があるか。入るなら誰に事前通知するか
- 切った枝をどこへ運び、どう処分するか
この記事で確定できなかったこと
書けなかったこと
- 催告の具体的な方法と、記録の残し方
- 「急迫の事情」が何を指すか
- 切り取った枝の所有権と、処分の方法
- 切取り費用を最終的に誰が負担するか
- 改正前から越境していた枝に、新しい規定がどう適用されるか
- 竹木の所有者と土地所有者が違うときの、竹木所有者の特定方法
いずれも条文にも法務省の資料にも書かれていないか、「考えられる」という解釈の提示にとどまっていました。確定した基準を示した一次情報を確認できていないため、当サイトでは断定しません。
このあと、どこから読むか
切ることを決めたあとの費用と段取りは庭木の伐採費用と追加料金を確認するポイントに、生垣そのものをやめる場合は生垣の撤去とフェンスへの切り替えに書いています。遠方の空き家の庭を誰に頼むかは遠方の空き家の草刈り・庭木管理を依頼する前の確認事項を、業者の選び方は業者の選び方をご覧ください。
よくある質問
隣からはみ出してきた枝を、自分で切ってもいいですか
根も同じ手順が要りますか
催告してから何日待てばよいですか
切るのにかかった費用は、木の持ち主に請求できますか
市役所に頼めば切ってもらえますか
確認した情報源
制度や料金は地域と時期で変わります。掲載しているのは確認日時点の内容です。実際の手続きは、 該当する自治体・事業者の最新の案内で確認してください。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法(明治二十九年法律第八十九号)第233条・第209条」
233条1項は「土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」と定め、3項が自ら切り取れる3つの場合(催告しても相当の期間内に切除しないとき/所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき/急迫の事情があるとき)を挙げる。4項は根について「切り取ることができる」とだけ定める。209条1項三号は枝の切取りを隣地使用の目的に挙げ、3項が事前通知を求める。
適用範囲:全国。2026-09-29に取得した現行版(法令ID 129AC0000000089)。/確認日 2026-09-29
注意:条文が読めるだけの資料で、条文に書いていないことは分からない。催告の方法(書面か口頭か)、「相当の期間」の日数、「急迫の事情」の内容、切った枝の所有権と処分方法、切取り費用の最終的な負担者は、いずれも233条の文言にない。e-Govの人が読めるURLはJavaScriptで描画されるため、条文本文の確認には同じ法令IDの法令データを取得する必要がある。
- 法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和8年4月版)」
相隣関係の見直し(隣地使用権・越境した竹木の枝の切取り)を「R5.4.1 施行」と記載。改正前は「訴えを提起し切除を命ずる判決を得て強制執行の手続をとるほかない」と説明。3項一号の「相当の期間」を「事案によるが、基本的には2週間程度と考えられる」、切取り費用を「基本的には、竹木の所有者に請求できると考えられる(民法703・709)」と説明している。
適用範囲:全51ページ。越境した枝の切取りはPDF30ページ、隣地使用権はPDF27ページ。/確認日 2026-09-29
注意:改正を所管した法務省の説明資料であって法令そのものではない。費用も「相当の期間」も「考えられる」という解釈の提示であり、確定した基準ではない。ここを根拠に「費用は必ず木の所有者に請求できる」「2週間待てばよい」と言い切ってはいけない。自力執行が禁止されている旨の記載は隣地使用権(209条)のページに置かれたもので、枝の切取りそのものについて同じ説明があるとは確認できていない。
- 法務省「民法等の一部を改正する法律 新旧対照条文(民法・第一条関係)」
改正前の233条は2項しかなく、1項は「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは」で始まり「土地の所有者は」という主語がなかった。現行の2項・3項は新旧対照上「(新設)」と表示され、根に関する改正前の2項は現行では4項に移された。
適用範囲:全97ページ。民法233条の新旧対照はPDF6ページ。/確認日 2026-09-29
注意:条文の文言がどう変わったかだけを示す資料で、施行日も改正の趣旨も書かれていない。「(新設)」は改正前に対応する条文がなかったことを示すだけで、改正前の裁判実務がどうだったかは分からない。改正前から越境していた枝に新しい規定がどう適用されるかも、この資料からは判断できない。
- 横浜市(住宅・空家対策)「越境した枝の切取りルールの改正について」
法務局の窓口やインターネットで不動産の登記事項証明書を取得すれば誰でも土地所有者を調査できる(有料)と案内。「必要以上に枝を切りすぎたり、竹木の所有者との思わぬトラブルになる可能性もあります」として、弁護士・司法書士等への相談を勧めている。市が越境した枝を切ることはできないとも明記している。
適用範囲:横浜市。空家対策のページ。ページ上の最終更新日は2025年2月25日。/確認日 2026-09-29
注意:登記事項証明書で分かるのは土地の所有者であって、竹木の所有者が土地所有者と一致しない場合(借地人が植えた木など)の特定方法はこのページからは分からない。手数料額も本文に書かれていないため、金額を書く根拠にはならない。隣地使用の事前通知の相手方が民法209条3項では隣地の所有者と隣地使用者の両方である点は、このページの要約からは読み取りにくい。条文の文言はe-Gov側で確認すること。
- 伊勢崎市 建設部住宅課 空家対策係「【民法改正】越境した木の枝の切取りルールの変更」
「市で越境枝のせん定や竹木を伐採することはできません。樹木の越境については、基本的には民事(相隣関係)の問題です」「伊勢崎市では、越境した竹木の枝を法的に切除可能かどうかは判断できませんのでご了承ください」と明記している。雑草やツタの繁茂についても市では刈り取れないとしている。
適用範囲:群馬県伊勢崎市。空家対策係のページ。ページ上の更新日は2025年11月25日。/確認日 2026-09-29
注意:伊勢崎市の対応であって、全国の市区町村が同じ対応とは限らない。神戸市には所有者不明などの場合に越境竹木の切取り費用を補助できる制度があり、自治体によって扱いが違う。切り取った枝の所有権についての記述もあるが、同市が根拠として挙げているのは書籍であり、法令や国の資料ではない。
