空き家の庭の枯れ草と火事は、統計では結びついていない
枯れ草を放置すると火事になる、放火されるとよく言われますが、消防庁の火災統計に空き家や庭という区分はありません。数字が何を数えているのか、条例と法律が誰に何を求めているのかを、原文どおりに整理しました。
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「庭の枯れ草を放っておくと放火される」という話は、実家の片付けを考えるときによく出てきます。その根拠になりそうな数字を、消防庁の資料で確かめました。結果として、思っていたのとは違う形になりました。
先に結論
- 消防庁の火災統計に、「空き家」「庭」という区分はありません(確定値PDFの全文に0件)
- したがって「空き家の庭で年間◯件」という数字は存在しません
- 「枯れ草を放置すると放火される」という因果関係を測った資料も見つかりませんでした
- 一方で、自治体の消防本部は実際に草刈りを呼びかけています(件数の裏づけは示されていません)
数字で脅す話にはできません。以下は「では何が分かっているのか」の整理です。
令和6年の火災は37,141件。その内訳
以下の数字はすべて、消防庁が「火災報告」に基づき令和6年1〜12月の火災を集計した確定値(消防情第281号・令和7年11月25日公表)と、令和7年版消防白書によります。
総出火件数は37,141件。火災種別の内訳は次のとおりです。
| 火災種別 | 件数 |
|---|---|
| 建物火災 | 20,972件 |
| その他火災 | 11,727件 |
| 車両火災 | 3,546件 |
| 林野火災 | 831件 |
| 船舶火災 | 62件 |
| 航空機火災 | 3件 |
「その他の火災」とは何か(消防白書の定義)
(出典:総務省消防庁「令和7年版 消防白書 資料1-1-9 火災の状況(備考に火災種別の定義)」/確認日 2026-09-29)建物火災、林野火災、車両火災、船舶火災及び航空機火災以外の火災(空地、田畑、道路、河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積所、軌道敷、電柱類等の火災)
この定義に「庭」は挙げられていません。 個人の宅地の庭がどの火災種別に入るかは、定義からは決まりません。
なお「林野火災」は同じ備考で「森林、原野又は牧野が焼損した火災」と定義されています。庭の火災ではありません。
出火原因で放火は何番目か——数え方で変わる
ここは引用の仕方で結論が変わるところなので、両方を書きます。
非合算(原因の区分をそのまま並べた場合)
- たばこ 3,058件(8.2%)
- たき火 2,781件(7.5%)
- こんろ 2,718件(7.3%)
- 電気機器 2,577件(6.9%)
- 放火 2,377件(6.4%)
消防白書の本文も「たばこが3,058件と最も多く」と書いています。
合算(放火+放火の疑い)
消防庁は確定値PDFに「放火と放火の疑いの合計」という行を公式に立てており、これは3,904件(10.5%)です。この数え方だと、たばこ3,058件を上回ります。
消防庁は統計上「放火火災」を「出火原因が『放火』又は『放火の疑い』の火災」と定義しています。
つまり「火災原因で最も多いのは放火」という言い方も、「最多はたばこ」という言い方も、どちらも消防庁の資料から出てきます。 違いは合算するかどうかだけです。引用するときは、どちらのベースかを示す必要があります。
放火火災は、半数以上が建物の火災ではない
放火火災3,904件を火災種別でみると、内訳はこうなります。
- その他火災 2,008件(51.4%)
- 建物計 1,643件(42.1%)
半数超が建物の火災ではありません。 出火箇所別でみると、最も多いのは次のとおりです。
| 出火箇所(放火火災3,904件) | 件数 |
|---|---|
| 空地、河川敷、田畑等 | 986件(25.3%) |
| 住宅の居室 | 429件(11.0%) |
| 公園 | 401件(10.3%) |
| 道路 | 221件(5.7%) |
| ゴミ集積所 | 91件(2.3%) |
ここを「空き家の庭」と読み替えてはいけない
「空地、河川敷、田畑等」は空き家の庭を指す区分ではありません。 区分の中身も資料では定義されていません。
また、火災種別の「その他火災」11,727件と、出火箇所「空地、河川敷、田畑等」7,570件(全火災ベース)は別の分類で件数も違います。 入れ替えて語ることはできません。
空き地の火災で一番多い原因は、放火ではない
「その他火災」11,727件の出火原因別をみると、順番はこうです。
- たき火 2,121件(18.1%) ← 最多
- 放火 1,139件(9.7%)+ 放火の疑い 869件(7.4%)= 2,008件(17.1%)
放火(合算しても)は最多ではありません。 空き地の火災を放火の話として語ると、実際の姿からずれます。
「着火物で枯草が最多」は、枯草火災が最多という意味ではない
令和6年の着火物別出火件数では、「枯草」が6,306件で最も多く、総出火件数37,141件に占める割合は16.98%(白書本文の表記は17.0%)です。令和5年は7,369件(19.06%)で、1,063件減っています。
(出典:総務省消防庁「令和7年版 消防白書 資料1-1-33 主な着火物別出火件数」/確認日 2026-09-29)言い換えられない3つのこと
- これは着火物の集計です。火災種別・出火原因・出火場所の集計ではありません。ここから「枯草火災が最も多い」という結論は出てきません(そもそも「枯草火災」は消防庁の統計上の分類名ではありません)
- 確定値PDF第4表の「枯草等 6,487件」は「その他火災」11,727件の内訳で、対象範囲も語も違います。 混ぜられません
- どちらの資料も「枯草」「枯草等」の中身(落葉・雑草・立ち枯れを含むか等)を定義していません
季節はどうなっているか
放火火災3,904件を月別にみると、多い順に次のとおりです。
- 1月 422件(10.8%)
- 12月 415件(10.6%)
- 3月 376件(9.6%)
1月と12月=冬に二山という形です。時間帯は2時間刻みで16〜17時台が391件(10.0%)。発火源はライターが1,090件で最多です。
林野火災の季節と混ぜないこと
消防庁の予防運動要綱は「林野火災は、例年1月から増加し始め、2月から5月にかけて特に多く発生する傾向があり」と書いています。
これは林野火災についての記述で、放火や空き地の火災の話ではありません。混ぜると「春が危ない」という別の話になってしまいます。
条例は誰に何を求めているのか
消防庁長官が示す火災予防条例(例)第24条は、こう定めています。
(出典:総務省消防庁「火災予防条例(例)第24条(空地及び空家の管理)・第25条(たき火)・第29条」/確認日 2026-09-29)1項 空地の所有者、管理者又は占有者は、当該空地の枯草等の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない
2項 空家の所有者又は管理者は、当該空家への侵入の防止、周囲の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない
これは法律ではありません
火災予防条例(例)は消防庁長官が示す標準例であって、法律でも全国のルールでもなく、それ自体が住民に義務を課すものではありません。
効力を持つのは各市町村(都)の条例で、条番号も文言も違います。
| 自治体 | 条番号 | 見出し |
|---|---|---|
| 条例(例) | 第24条 | 空地及び空家の管理 |
| 東京都 | 第25条の2 | 空地及び空き家の管理 |
| 豊岡市(兵庫県) | 第33条 | 空地及び空家の管理 |
| 尾張旭市(愛知県) | 第24条 | 空地及び空家の管理 |
自分の市区町村の条例を見ないと、条番号は分かりません。
さらに、条文の読み方にも限界があります。第24条1項の「空地」に定義規定はなく、同じ条例(例)の中で「空地」は危険物の保有空地という別の意味でも使われています。2項に「枯草」の語はなく、庭の枯草が「周囲の燃焼のおそれのある物件」に当たるかは条文に書かれていません。
消防法が定めているのは、消防機関の権限
消防法第3条1項は、屋外において火災の予防に危険であると認める物件について、消防長・消防署長その他の消防吏員が必要な措置を命じられると定め、第3号に「危険物又は放置され、若しくはみだりに存置された燃焼のおそれのある物件の除去その他の処理」を挙げています。2項は所有者等を確知できない場合、4項は行政代執行法に従う代執行を定めています。
(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「消防法 第3条・第23条」/確認日 2026-09-29)2つの注意
- 条文の対象は「放置され、若しくはみだりに存置された燃焼のおそれのある物件」という一般的な書き方で、庭の枯れ草が実際に当たるかどうかは消防長・消防署長等の判断です。「庭の枯れ草は除去を命じられる」と断定できません
- 命令の主体は消防機関です。 これは近隣住民が撤去を求める根拠条文ではありません
なお第23条は「市町村長は、火災の警戒上特に必要があると認めるときは、期間を限つて、一定区域内におけるたき火又は喫煙の制限をすることができる」と定めています。
空家法のガイドラインに「枯草」「放火」は無い
空き家の話なので、空家法側も確認しました。国土交通省の現行ガイドラインの全文に「枯草」「枯れ草」「雑草」「草」「放火」の語は1件もありません(「火災」は消防法に言及する1か所のみ)。
(出典:国土交通省 住宅局「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」/確認日 2026-09-29)ただし、庭の木そのものは基準に入っています。 別紙1「保安上危険に関して参考となる基準」の1.建築物等の倒壊(3)立木に、次の状態例があります。
- 特定空家等: 「倒壊のおそれがあるほどの著しい立木の傾斜」「倒壊のおそれがあるほどの著しい立木の幹の腐朽」
- 管理不全空家等: 「立木の伐採、補強等がなされておらず、腐朽が認められる状態」
4.部材等の飛散(2)立木の枝には「立木の大枝の飛散」もあります。
つまり空家法側では
火災の危険としてではなく、倒壊・飛散・はみ出しの危険として、庭の木が基準に入っています。「庭の木は放っておいても空家法側では問題にならない」とは読めません。
一方で、枯れ草については空家法にもガイドラインにも記述がありません。 空家法5条は「適切な管理に努める」という努力義務で、13条の指導・勧告で例示される措置は「修繕、立木竹の伐採」——枯草の刈り取りとは書かれていません。
木そのものの責任については、別ページで条文に沿って整理しています。
それでも自治体は草刈りを呼びかけている
統計が答えていないのとは別に、現場の消防本部は実際に呼びかけています。 数字の裏づけは示されていませんが、これも一次情報です。
蒲郡市消防本部(愛知県)
空気が乾燥し、強風が吹くこの時季は、枯草火災が起こりやすく、拡がりやすくなります。
枯草火災は、農地や空き地、道路や川沿いの法面などで、多く発生しています。原因の多くは、たき火ですが、火の気のないところでもたばこの投げ捨て、放火などで発生します。
枯草火災は、風に煽られると、またたく間に拡がるのが特徴で、近隣の建物や山林に燃え移ることがあります。
対策として「空き地などの枯草を放置せず、定期的に草刈りをし、適切な管理をする。」
豊岡市消防本部(兵庫県)・尾張旭市消防本部(愛知県)
豊岡市: 「空き地や空き家は、人の目が届きにくいため放火の標的になりやすく、火災が起こると発見が遅れ、大火災に至る恐れがあります。」狙われやすい空き家の特徴として「庭の手入れがなく、荷物等が放置されている」を挙げ、対策に「不定期に訪れ、管理者の存在を示す」「屋外に燃えやすいものを放置しない」。
尾張旭市: 「雑草や枯草などは刈り取るなどして適切に管理しましょう。」「木くず、紙くずなどの燃えやすいものは、置かない(放置しない)ようにしましょう。」
ただし、これらは数字ではありません
- 蒲郡市のページに件数や年次は示されていません。「枯草火災」は消防庁の火災統計にある分類名ではないので、この語を全国統計と結びつけてはいけません
- 豊岡市の「狙われやすい空き家の特徴」は、件数の裏づけが示されていない同市の見解です
- 尾張旭市の「特に空き地及び空き家から出火した火災は、放火によるものが多くあります」は件数・年次・出典のない記述で、消防庁の統計に「空き家から出火した火災」という区分が存在しないため、数字として確認する手立てがありません
放火の動機・手口・狙われる条件についても、消防庁の資料が示すのは発火源と時間帯までで、なぜその場所が選ばれたかは扱っていません。
刈った枯れ草を「燃やして片づける」ことはできるか
原則は焼却禁止
廃棄物処理法16条の2は「何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。」と定めています。
例外は施行令14条の5類型で、身近なのは第5号「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」です。
ただし「軽微なもの」の判断基準は、政令に書かれていません。 庭の枯れ草のたき火がこの5号に当たるかどうかは、条文からは決まりません。燃やして片づけることを考えているなら、先に市区町村の消防本部に届出や扱いを確かめてください。
あわせて、火災予防条例(例)25条は「可燃性の物品その他の可燃物の近くにおいては、たき火をしてはならない」「たき火をする場合においては、消火準備その他火災予防上必要な措置を講じなければならない」と定め、29条は火災に関する警報が発せられた場合に「屋外において火遊び又はたき火をしないこと」を挙げています。
蒲郡市のようにたき火の届出を求めている自治体もありますが、これは市の運用で、全国共通の手続ではありません。
刈った草の処分の考え方は、別ページにまとめています。
国の予防運動が挙げているのは、火の使い方
消防庁の令和8年春季全国火災予防運動実施要綱の別紙1(全国山火事予防運動)は、啓発の重点事項を6項目挙げています。
6項目(別紙1)
- ア 林野火災注意報、林野火災警報の発令時など乾燥・強風時には、屋外での火の使用をしないこと
- イ 枯れ草等のある火災が起こりやすい場所では、たき火をしないこと
- ウ たき火等火気の使用中はその場を離れず、使用後は完全に消火すること
- エ 火入れを行う際は市町村長の許可を必ず受けること
- オ たばこ
- カ 火遊び
6項目すべてが火の使い方に関する行為で、草を刈る・減らすという行為は一つもありません。 イは「枯れ草等のある場所でたき火をするな」であって、「枯れ草を減らせ」ではありません。
さらに、この要綱の全文に「空き家」「空家」「空き地」「空地」「庭」の語は1件もありません。 「枯れ草等」への言及は山火事予防運動の文脈で、啓発の対象は入山者・森林所有者・林内及び森林周辺の作業者・地域住民等です。空き家の庭を名指しした記述はありません。
判断するときに使えること
統計から言えること/言えないこと
言えること
- 令和6年の着火物別で「枯草」は6,306件で最多(前年から1,063件減)
- 放火火災の半数超(51.4%)は建物の火災ではない
- 放火火災の出火箇所で最多は「空地、河川敷、田畑等」986件(25.3%)
- 「その他火災」の原因で最多は放火ではなくたき火(2,121件・18.1%)
言えないこと
- 空き家の庭で何件起きたか(区分が存在しない)
- 枯れ草の放置と放火の因果関係(測っていない)
- 「枯草火災が最多」(着火物の集計を火災種別の集計に読み替えられない)
- 空き家900万2千戸という統計から火災リスクを導くこと(住宅の統計で、庭の状態も火災も調べていない)
業者に確認したいこと
- 自分の市区町村の火災予防条例で、空地・空き家の管理の条文が第何条か
- 同じ条文が「空地」だけを対象にしているか、空き家も対象にしているか
- たき火に届出を求めている自治体か(求めている市があります)
- 刈った草をどの区分で出せばよいか(自治体ごとに違います)
- (管理を頼む場合)年に何回の草刈りを想定した見積もりか
- (管理を頼む場合)刈った草の搬出と処分は含まれるか
草刈りを頼む場合、費用が変わる条件
- 面積と、草の高さ(膝丈か、腰丈以上か)
- 年間の回数(1回きりか、定期か)
- 刈った草の搬出と処分を含めるか、その場に置くか
- 傾斜地・法面が含まれるか
- 敷地までの通路の幅、車を停められるか
遠方の実家の草刈りを頼む場合の整理は、別ページにあります。
よくある質問
枯れ草を放置すると放火されるのですか
空き家の庭で火事は何件起きているのですか
火事の原因で放火は1位ですか
空き地の火災は放火が一番多いのですか
刈った枯れ草は燃やして片づけてよいのですか
確認した情報源
制度や料金は地域と時期で変わります。掲載しているのは確認日時点の内容です。実際の手続きは、 該当する自治体・事業者の最新の案内で確認してください。
- 総務省消防庁「令和6年(1〜12月)における火災の状況(確定値)」
令和6年1〜12月の火災を「火災報告」に基づき集計した確定値(消防情第281号・令和7年11月25日公表)。総出火件数37,141件。火災種別は建物火災20,972件、林野火災831件、車両火災3,546件、船舶火災62件、航空機火災3件、その他火災11,727件。出火原因別は たばこ3,058件(8.2%)、たき火2,781件(7.5%)、こんろ2,718件(7.3%)、電気機器2,577件(6.9%)、放火2,377件(6.4%)で、「放火と放火の疑いの合計」は3,904件(10.5%)という行が公式に立っている。放火火災3,904件の火災種別は その他火災2,008件(51.4%)、建物計1,643件(42.1%)。放火火災の出火箇所別は 空地・河川敷・田畑等986件(25.3%)、住宅の居室429件(11.0%)、公園401件(10.3%)、道路221件(5.7%)、ゴミ集積所91件(2.3%)。放火火災の月別は 1月422件(10.8%)、12月415件(10.6%)、3月376件(9.6%)の順。時間帯は2時間刻みで16〜17時台391件(10.0%)。発火源はライター1,090件が最多。「その他火災」11,727件の内訳(第4表の都道府県計)は 枯草等6,487件、ごみ・くず等1,268件、引火性・可燃物質762件、その他3,210件。「その他火災」の出火原因別は たき火2,121件(18.1%)が最多、放火1,139件(9.7%)+放火の疑い869件(7.4%)=2,008件(17.1%)がその次。
適用範囲:令和6年1〜12月に発生した火災の全国集計。/確認日 2026-09-29
注意:このPDFの全文に「空き家」「空家」「庭」「無人」の語は1か所もない(全文検索で0件)。火災種別・出火箇所・建物用途のいずれにも空き家や庭の区分はないので、空き家の庭で何件起きたかは書けない。 出火箇所の「空地、河川敷、田畑等」は空き家の庭を指す区分ではなく、区分の内容も定義されていない。火災種別の「その他火災」11,727件と出火箇所「空地、河川敷、田畑等」7,570件は別の分類で件数も違うため、入れ替えて語れない。放火の件数を引くときは合算ベース(放火+疑い=3,904件)か非合算ベース(放火2,377件)かを必ず明示すること。損害額等は調査中のものがあり変動しうると備考にある。
- 総務省消防庁「令和7年版 消防白書 資料1-1-33 主な着火物別出火件数」
令和6年の着火物別出火件数で「枯草」が6,306件で最も多く、総出火件数37,141件に占める割合は16.98%(白書本文はこれを「17.0%」と表記)。令和5年は7,369件(19.06%)で、1,063件減っている。
適用範囲:令和6年中の上位10番目までを掲載した表。/確認日 2026-09-29
注意:着火物の集計であって、火災種別・出火原因・出火場所の集計ではない。「着火物で枯草が最多」を「枯草火災が最も多い」と言い換えてはいけない(「枯草火災」は消防庁の統計上の分類名ではない)。確定値PDF第4表の「枯草等」6,487件は「その他火災」11,727件の内訳で、対象範囲も語も違うので混ぜられない。どちらの資料も「枯草」「枯草等」の中身(落葉・雑草・立ち枯れを含むか等)を定義していない。
- 総務省消防庁「令和7年版 消防白書 資料1-1-9 火災の状況(備考に火災種別の定義)」
備考8に「その他の火災」の定義として「建物火災、林野火災、車両火災、船舶火災及び航空機火災以外の火災(空地、田畑、道路、河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積所、軌道敷、電柱類等の火災)」がある。備考4に林野火災の定義「森林、原野又は牧野が焼損した火災」がある。
適用範囲:消防白書の統計資料の備考(定義)。/確認日 2026-09-29
注意:定義に「庭」は挙げられていない。個人の宅地の庭がどの火災種別に入るかは、この定義からは決まらない。 林野火災は森林・原野・牧野の火災で、庭の火災ではない。
- 総務省消防庁「火災予防条例(例)第24条(空地及び空家の管理)・第25条(たき火)・第29条」
第24条1項「空地の所有者、管理者又は占有者は、当該空地の枯草等の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない」、2項「空家の所有者又は管理者は、当該空家への侵入の防止、周囲の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない」。第25条(たき火)「可燃性の物品その他の可燃物の近くにおいては、たき火をしてはならない」「たき火をする場合においては、消火準備その他火災予防上必要な措置を講じなければならない」。第29条は火災に関する警報が発せられた場合について「屋外において火遊び又はたき火をしないこと」を挙げる。(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官・掲載版は20260101)
適用範囲:消防庁長官が示す標準例。/確認日 2026-09-29
注意:これは標準例であって、法律でも全国のルールでもない。それ自体が住民に義務を課すものではない。 効力を持つのは各市町村(都)の条例で、条番号も文言(空家/空き家)も違う(東京都は第25条の2、豊岡市は第33条、尾張旭市は第24条)。第24条1項の「空地」に定義規定はなく、同じ条例(例)の中で「空地」は危険物の保有空地という別の意味でも使われている。第2項に「枯草」の語はなく、庭の枯草が「周囲の燃焼のおそれのある物件」に当たるかは条文に書かれていない。
- 東京都(東京都例規集データベース)「東京都火災予防条例 第25条の2(空地及び空き家の管理)」
消防庁の火災予防条例(例)第24条に相当する規定が、東京都では第25条の2「空地及び空き家の管理」として置かれている。送り仮名も条例(例)の「空家」ではなく「空き家」。
適用範囲:東京都の区域(東京都消防長の管轄)。/確認日 2026-09-29
注意:条番号と表記は自治体ごとに違う。 記事で条番号を出すなら自治体名を必ず添える。自分の市区町村の条例を確認しないと条番号は分からない。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「消防法 第3条・第23条」
第3条1項は、屋外において火災の予防に危険であると認める物件の所有者・管理者・占有者で権原を有する者に対し、消防長・消防署長その他の消防吏員が必要な措置を命じられると定め、第3号に「危険物又は放置され、若しくはみだりに存置された燃焼のおそれのある物件の除去その他の処理」を挙げる。2項は所有者等を確知できない場合、4項は行政代執行法に従う代執行を定める。第23条「市町村長は、火災の警戒上特に必要があると認めるときは、期間を限つて、一定区域内におけるたき火又は喫煙の制限をすることができる」。掲載時点の施行日は2025-06-01。
適用範囲:全国。/確認日 2026-09-29
注意:条文の対象は「放置され、若しくはみだりに存置された燃焼のおそれのある物件」という一般的な書き方で、庭の枯れ草が実際に当たるかどうかは消防長・消防署長等の判断。「庭の枯れ草は除去を命じられる」と断定できない。また命令の主体は消防機関であって、近隣住民が撤去を求める根拠条文ではない。
- デジタル庁(e-Gov法令検索)「廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第16条の2(焼却禁止)/同法施行令 第14条」
法第16条の2「何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。」として、一号(処理基準に従う焼却)、二号(他の法令等による焼却)、三号「公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの」を挙げる。施行令(昭和四十六年政令第三百号・https://laws.e-gov.go.jp/law/346CO0000000300 )第14条が三号の5類型を定め、第5号が「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」。法の施行日は2026-09-16、政令は2026-04-01。
適用範囲:全国。焼却は原則禁止で、政令の5類型が例外。/確認日 2026-09-29
注意:第5号の「軽微なもの」の判断基準は政令に書かれていない。 したがって「庭の枯れ草のたき火はここに当たるので合法」と書くことはできない。条文は「廃棄物」を対象とし、庭の枯れ草が個別の場面で廃棄物に当たるかも条文からは断定できない。あわせて火災予防条例(例)第25条がたき火自体に別の制限をかけ、火災警報発令中は第29条で屋外のたき火が制限される。自治体が届出等を求めている場合があり、全国共通の手続として書けない。
- 総務省消防庁長官「令和8年春季全国火災予防運動実施要綱・別紙1 全国山火事予防運動実施要綱」
令和8年1月30日付(消防予第523号)。実施期間は令和8年3月1日〜7日。推進項目に「⑷乾燥時及び強風時の火災に対する警戒の強化」「⑸放火火災防止対策の推進」がある。別紙1(全国山火事予防運動)の啓発の重点事項は、ア「林野火災注意報、林野火災警報の発令時など乾燥・強風時には、屋外での火の使用をしないこと」イ「枯れ草等のある火災が起こりやすい場所では、たき火をしないこと」ウ「たき火等火気の使用中はその場を離れず、使用後は完全に消火すること」エ 火入れを行う際の市町村長の許可 オ たばこ カ 火遊び の6項目。
適用範囲:各都道府県知事・各指定都市市長あての通知。/確認日 2026-09-29
注意:この要綱の全文に「空き家」「空家」「空き地」「空地」「庭」の語は1件もない。「枯れ草等」への言及は別紙1=山火事予防運動の文脈で、啓発の対象は入山者・森林所有者・林内及び森林周辺の農地及び作業現場の作業者・地域住民等。空き家の庭を名指しした記述はない。 6項目はすべて火の使い方に関する行為で、草を刈る・減らすという行為は一つもない。「枯れ草等のある場所でたき火をするな」を「枯れ草を減らせ」「枯れ草があると火災になる」に要約してはいけない。原文の語は「乾燥時及び強風時」「乾燥・強風時」で、「冬」「厳冬期」に置き換えてはいけない。
- 愛知県蒲郡市消防本部「空気が乾燥し枯草火災が起こりやすい時季!」
「空気が乾燥し、強風が吹くこの時季は、枯草火災が起こりやすく、拡がりやすくなります。」「枯草火災は、農地や空き地、道路や川沿いの法面などで、多く発生しています。原因の多くは、たき火ですが、火の気のないところでもたばこの投げ捨て、放火などで発生します。」「枯草火災は、風に煽られると、またたく間に拡がるのが特徴で、近隣の建物や山林に燃え移ることがあります。」対策として「空き地などの枯草を放置せず、定期的に草刈りをし、適切な管理をする。」「枯草が覆い茂った状態を放置すると、火災の危険が高くなりますので、草刈りなど管理をお願いします。」
適用範囲:蒲郡市消防本部が市内向けに出している注意喚起。/確認日 2026-09-29
注意:件数や年次は示されていない、蒲郡市の現場的な説明。「枯草火災」は消防庁の火災統計にある分類名ではないので、この語を全国統計と結びつけてはいけない。「たき火を行うときは消防本部へ届出をする」は蒲郡市の運用で、全国共通の手続ではない。
- 兵庫県豊岡市消防本部「空き地や空き家は狙われやすい‼」
「空き地や空き家は、人の目が届きにくいため放火の標的になりやすく、火災が起こると発見が遅れ、大火災に至る恐れがあります。」狙われやすい空き家の特徴として「庭の手入れがなく、荷物等が放置されている」を挙げ、対策として「不定期に訪れ、管理者の存在を示す」「屋外に燃えやすいものを放置しない」を挙げる。豊岡市火災予防条例は第33条(空地及び空家の管理)。
適用範囲:豊岡市消防本部が市内向けに出している注意喚起。/確認日 2026-09-29
注意:冒頭の「近年、火災原因で最も多いのが「放火」及び「放火の疑い」です」は出典・年次が示されておらず、放火と放火の疑いを合算した場合の言い方。合算は消防庁自身も確定値PDFで行っている(3,904件で、たばこ3,058件を上回る)ので数字としては裏づくが、非合算では放火2,377件は5番目なので、引くときはどちらのベースかを必ず示す。「狙われやすい空き家の特徴」は件数の裏づけが示されていない豊岡市の見解。条番号は豊岡市の第33条で他市町村と異なる。
- 愛知県尾張旭市消防本部 予防課「空き家および空き地の火災にご注意!!!」
尾張旭市火災予防条例第24条(空地及び空家の管理)を「空地の所有者、管理者または占有者は、この空地の枯草等の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない。」と引用し、空き地の管理として「雑草や枯草などは刈り取るなどして適切に管理しましょう。」「木くず、紙くずなどの燃えやすいものは、置かない(放置しない)ようにしましょう。」と呼びかけている。
適用範囲:尾張旭市消防本部が市内向けに出している注意喚起。/確認日 2026-09-29
注意:「特に空き地及び空き家から出火した火災は、放火によるものが多くあります」は件数・年次・出典のない記述で、消防庁の統計に「空き家から出火した火災」という区分は存在しないため数字として裏づけられない。この一文は事実としては使えず、自治体がこう呼びかけている、という形でしか引けない。 条番号は尾張旭市の第24条。
- 国土交通省 住宅局「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」
別紙4の4「立木等による破損・通行障害等の発生」に、特定空家等として「周囲の建築物の破損又は歩行者等の通行の妨げ等のおそれがあるほどの著しい立木の枝等のはみ出し」、管理不全空家等として「立木の枝の剪定等がなされておらず、立木の枝等のはみ出しが認められる状態」を挙げる。別紙1にも「立木の大枝の剪定、補強がなされておらず、折れ又は腐朽が認められる状態」がある。
適用範囲:空家法に基づく判断の参考基準。最終改正は令和8年9月3日。/確認日 2026-09-29
注意:現行ガイドライン本文に「つる」「蔓」「繁茂」の語は1か所もない(全文をテキスト抽出して検索済み)。行政が見るのは「立木」と「立木の枝」で、壁を覆うつるそれ自体を名指しした基準は書かれていない。旧版のガイドラインには「立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している。」という状態例があり旧版URLも現在HTTP 200で残っているが、現行版には引き継がれていない。旧版を現行の基準として引くと誤りになる。
