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相続登記の義務化と期限|実家の庭に手を入れる前の名義確認

相続登記は義務化され、令和6年4月1日から期限は知った日から3年以内。それ以前に相続した分は令和9年3月31日までです。共有名義の庭木を切れるかは、民法251条・252条の線を条文どおりに整理しました。

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低木に囲まれた庭の通路
参考写真 説明用の素材写真。実際の利用者・商品・施工実績を示す写真ではありません。 写真:Haydon

実家の庭を片付けようとして、最初に止まるのが名義です。単独名義か共有名義かで、できることが変わります。 そして令和6年4月から、相続登記には申請義務がついています。

このページの順番

  1. 名義を確かめる(共有かどうかで、以下の話が変わります)
  2. 相続登記の期限(起点は亡くなった日ではありません)
  3. 共有の場合、庭木を切れるかの条文上の線

★ このページは、条文に書いてあることと、条文からは決まらないことを分けてあります。判例・裁判例は確認していません。 条文だけで決まらない部分は司法書士・弁護士に確かめてください。

相続登記の期限は、起点が2つある

不動産登記法76条の2(原文)

第1項

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

後段

遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

第2項

(法定相続分に応じた登記がされた後に遺産の分割があったときは)…当該遺産の分割の日から三年以内に…登記を申請しなければならない。

(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「不動産登記法 第76条の2・第76条の3・第164条第1項・附則第5条第6項」/確認日 2026-10-06)

期限は起点の違う二本立てです。 亡くなった日からではなく「知った日」から。遺産分割があればその「分割の日」から。

令和6年4月1日より前に相続した分

法務省のQ&Aの記述です。

相続登記の義務化は、令和6年4月1日から始まりました。 ただし、令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります。

そしてそれらについては「令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります」と案内しています。

(出典:法務省 民事局「相続登記の申請義務化に関するQ&A」/確認日 2026-10-06)

条文上の根拠

施行前に開始した相続に76条の2が及ぶ根拠は、不動産登記法に収載された附則(令和三年四月二八日法律第二四号)第5条第6項で、同項は「知った日」を「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と読み替えると定めています。

過料は「罰金」ではない

相続登記の申請義務違反から過料までの流れ法務省のQ&Aによる3段階を、通知までの条件を分けて4つの箱にしました。決めるのは裁判所で、登記官が催告する端緒も限定されています。1登記官が催告する端緒は2つに限定(下の注を参照)2期限内に登記がされない登記官が「正当な理由」があると認めた場合は通知しない3登記官が裁判所に通知する申請義務違反の通知4裁判所が判断して裁判を行う法務省のQ&Aによる「過料は、10万円以下の範囲内で裁判所において決定されます。」
図:法務省のQ&Aによる3段階を、通知までの条件を分けて4つの箱にしました。決めるのは裁判所で、登記官が催告する端緒も限定されています。

不動産登記法164条1項は「正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する」と定めています。

2つの正確さ

  1. 「過料」は刑罰の罰金ではありません。 「10万円の罰金」と書くのは二重に不正確です
  2. 「十万円以下」は上限です。 法務省のQ&Aは「10万円以下の範囲内で裁判所において決定されます。」としています(出典:法務省 民事局「相続登記の申請義務化に関するQ&A」/確認日 2026-10-06)

登記官が催告する端緒は限定されている

これはあまり知られていない点です。法務省のQ&Aの記述です。

登記官は、相続人が不動産の取得を知った日がいつかを把握することは容易ではありませんので、次の(1)又は(2)を端緒として、義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、申請の催告を行うものとしています。

  • (1) 遺言に基づく移転登記を申請したが、その遺言書に別の不動産も記載されていたとき
  • (2) 遺産分割の結果に基づく相続登記を申請したが、その協議書に別の不動産も記載されていたとき

実家の建物だけ登記して土地を忘れる、というのがまさにこの端緒に当たります。 庭(土地)を忘れないことが実務的に効きます。

「正当な理由」は5つ挙がっているが、網羅ではない

法務省のQ&Aは「相続登記の義務の履行期間内において、次の(1)から(5)までのような事情が認められる場合には…」として、次を挙げています。

  1. 相続人が極めて多数で戸籍関係書類等の収集に多くの時間を要する場合
  2. 「遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合」
  3. 義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  4. 配偶者からの暴力の被害者等で避難を余儀なくされている場合
  5. 経済的に困窮して費用を負担する能力がない場合

そのうえで「これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事情に応じ」認められることがあると書いています。

2つの条件を落とさない

  • 「履行期間内において」という時期の条件が付いています
  • 「これらに該当しない場合においても」とあるので、この5つが網羅列挙ではありません

自分の事情が「正当な理由」に当たるかどうかは、法務局の登記手続案内や司法書士に確かめてください。

相続人申告登記では済まない部分がある

不動産登記法76条の3は「相続人である旨の申出」の制度で、第2項は76条の2第1項の期間内に申出をした者は申請義務を「履行したものとみなす」としています(括弧書きで「当該申出の前にされた遺産の分割によるもの」は除く)。

法務省が挙げている留意点

申出をした相続人についてのみ、相続登記の義務を履行したものとみなされます

もっとも、遺産分割がされた後にこれに基づく登記をする義務を相続人申告登記によって履行することはできないことや、不動産についての権利関係を公示するものではなく、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には相続登記をする必要がある

条文でも、76条の3第4項が、申出をした者がその後の遺産分割で所有権を取得したときは「当該遺産の分割の日から三年以内に」登記を申請しなければならないと定めており、義務は残ります。

庭を片付けたあとに土地を売る予定があるなら、相続人申告登記では足りません。

申出の手続そのもの(必要書類・提出先・登記簿にどう載るか・数次相続のとき)は相続人申告登記とはのページに分けてまとめました。

共有かどうかで、できることが変わる

遺産分割をしていない場合について、法務省のQ&Aはこう書いています。

全ての相続人が法定相続分の割合で不動産を取得(共有)した状態となる

遺産分割が調い、その不動産の所有者があなた以外の者となった場合には、あなたの義務はなくなります

つまり分割が済むまでは共有です。 共有の庭に手を入れるときは、民法249条以下が働きます。

共有の庭に手を入れるとき、民法が定めている線民法251条・252条が定めている3つの区分。庭木を切ることがどの区分に当たるかは、条文に書かれていません。共有物に対して何をするか(民法251条・252条)変更を加える他の共有者の同意が必要(251条1項)形状・効用の著しい変更を伴わない251条1項の括弧書きで除かれる管理に関する事項持分の価格に従い過半数で決する(252条1項)保存行為各共有者が単独でできる(252条5項)現に使っている共有者に特別の影響その承諾を得なければならない(252条3項)
図:民法251条・252条が定めている3つの区分。庭木を切ることがどの区分に当たるかは、条文に書かれていません。
(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法 第249条・第251条・第252条(共有)」/確認日 2026-10-06)

条文の言葉

第251条第1項

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

第252条第1項

共有物の管理に関する事項は「各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。」とされています(251条1項の変更を加えるものは、この「管理に関する事項」から除かれます)。

第252条第5項

各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

第252条第3項

前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

ここが条文からは決まりません

庭木を切ることが「変更」か「管理」か「保存」かは、条文に書かれていません。

条文から言えるのは、

  • 3つの区分があり、必要な合意の形が違う(全員の同意/持分の過半数/単独)
  • 過半数は頭数ではなく「持分の価格」
  • 現に実家に住んでいる相続人がいる場合、252条3項の「特別の影響」の問題になりうる

までです。倒木のおそれがある木を切るのが保存行為に当たるかどうかも、条文には書かれていません。

共有者と連絡が取れないとき

民法251条2項と252条2項は、他の共有者を知ることができないときや所在を知ることができないとき、また相当の期間を定めて催告しても賛否が明らかにされないときに、裁判所の裁判によって残りの共有者で決められる道を定めています。

条文に道はあります。手続の進め方は弁護士・司法書士の領域です。

第252条4項1号の「十年」は別の話

民法252条4項1号に「樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年」とあります。これは共有物に設定できる賃借権等の存続期間の上限で、伐採の可否の基準ではありません。混同しやすい条文です。

名義と境界は、セットで確かめる

庭に手を入れる前に確かめるものは2つあります。名義と境界です。

→ 境界がはっきりしない庭で、先に壊してはいけないもの

境界の側では、不動産登記法143条1項が筆界特定の考慮事項として「工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯」を挙げています。古い塀や杭を壊す前に記録を残すのが、どちらの話でも効きます。

登記にかかる公的な額

登録免許税(条文の数字)

登録免許税法別表第一の第一号(二)イは、相続による所有権の移転の登記について課税標準を「不動産の価額」、税率を「千分の四」と定めています(売買などその他の原因による移転の登記はハで千分の二十)。

同法19条は、計算した金額が「千円に満たない場合には…登録免許税の額は、千円とする。」と定めています。

租税特別措置法84条の2の2第2項は、令和9年3月31日までの間に受ける土地の相続による所有権の移転の登記について、課税標準たる「不動産の価額が百万円以下であるとき」は登録免許税を課さないと定めています(出典:デジタル庁(e-Gov法令検索)「登録免許税法 別表第一第一号(二)イ・第19条/租税特別措置法 第84条の2の2第2項」/確認日 2026-10-06)。

この非課税は対象が土地で、しかも令和9年3月31日までの期限つきです。 建物は対象ではありません。

この非課税は条件を満たした場合に限られます。自分の登記が当たるかどうかと、実際の税額は、法務局の登記手続案内や司法書士に確かめてください。

必要書類は、相談先が分かれている

法務局の相続登記ハンドブックが挙げている書類です。

  • 「被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの経緯が分かる戸籍の証明書」
  • 「遺産分割協議の当事者である相続人全員の戸籍の証明書」
  • 遺産分割協議書(実印を押し、印鑑証明書を添付)
  • 「相続人(土地・建物を相続した人)の住民票の写し」(住民票コードを記載した場合は省略できるとの記述もあります)

印鑑証明書は「全員」分ではない

ハンドブックの注②に、次の限定があります。

遺産分割協議を行った相続人(ただし、登記申請人である相続人を除く。)の印鑑証明書を各1通添付します。

(出典:法務局(法務省)「相続登記ハンドブック」/確認日 2026-10-06)

相談先の線

ハンドブックは、はっきり書いています。

法務局(登記所)では、遺産の分割の方法や、遺産分割協議書の作成についてのお問合せ・ご相談にお応えすることができません。

法務省のQ&Aの相談先は「お近くの法務局(登記手続案内(予約制)を実施中)や、登記の専門家である司法書士・司法書士会等に御相談ください。」です。

手続の案内は法務局、遺産分割の中身は別という線が引かれています。

庭の作業に入る前の確認

業者に確認したいこと

  • 登記簿で名義を確認する(単独名義か共有名義か)
  • 建物と土地の両方が登記されているかを見る(土地を忘れると催告の端緒になります)
  • (共有の場合)持分の割合を確認する。過半数は頭数ではなく持分の価格です
  • (共有の場合)実家に現に住んでいる相続人がいないか(252条3項の問題になりえます)
  • 相続を知った日から3年が経っていないか
  • 令和6年4月1日より前に相続した分は、令和9年3月31日が期限になっていないか
  • 遺産分割が済んでいるか。法定相続分に応じた登記がされた後に分割があり、その分割で相続分を超えて取得したなら分割の日から3年、それ以外は知った日から3年のまま
  • (売却の予定があるなら)相続人申告登記では足りないことを確認する
  • 庭木の伐採が「変更」に当たるかの判断は、司法書士・弁護士に確認する

条文だけでは決まらないこと

  • 庭木の伐採が共有物の「変更」か「管理」か「保存」か。 条文に書かれていません
  • 自分の事情が「正当な理由」に当たるか。 5つの例は網羅列挙ではなく、最終的には裁判所の判断です
  • 過料が科されるか。 登記官の催告の端緒が2つに限定され、決めるのは裁判所です
  • 登記にかかる具体的な額。 税率は条文にありますが、不動産の価額は登記ごとに違います

遠方の実家の庭をどこまで管理するかはこちら、解体後の固定資産税はこちらにまとめています。

よくある質問

相続登記の期限はいつまでですか
不動産登記法76条の2第1項は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内」と定めています。起点は亡くなった日ではありません。令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産については、法務省のQ&Aが「令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります」と案内しています。
登記しないと10万円の罰金ですか
罰金ではなく「過料」で、しかも「十万円以下」という上限です。法務省のQ&Aは3段階で説明しています。(1)登記官が催告する、(2)期限内に登記がされなければ登記官が裁判所に通知する(登記官が「正当な理由」があると認めた場合は通知しない)、(3)通知を受けた裁判所が判断して過料を科する旨の裁判を行う。「過料は、10万円以下の範囲内で裁判所において決定されます。」とされています。
相続人が多くて話がまとまりません
法務省のQ&Aは「正当な理由」が一般に認められる事情として5つを挙げており、その1つが「相続人が極めて多数で戸籍関係書類等の収集に多くの時間を要する場合」です。ただしこれは「相続登記の義務の履行期間内において」という条件つきで、かつ「これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事情に応じ」認められることがあるとされています。網羅列挙ではありません。
共有名義の実家の庭木を切ってよいですか
条文だけでは決まりません。民法251条1項は変更に全員の同意を求め、括弧書きで「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」としています。252条1項は管理に関する事項を「各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する」、5項は「各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる」と定めています。庭木を切ることが変更か管理か保存かは、条文に書かれていません。どの区分に当たるかは司法書士・弁護士に確かめてください。
相続人申告登記をすれば済みますか
済まない部分があります。法務省のQ&Aは「申出をした相続人についてのみ、相続登記の義務を履行したものとみなされます」としたうえで、「もっとも、遺産分割がされた後にこれに基づく登記をする義務を相続人申告登記によって履行することはできないことや、不動産についての権利関係を公示するものではなく、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には相続登記をする必要がある」と留意点を挙げています。

確認した情報源

制度や料金は地域と時期で変わります。掲載しているのは確認日時点の内容です。実際の手続きは、 該当する自治体・事業者の最新の案内で確認してください。

  1. デジタル庁(e-Gov法令検索)「不動産登記法 第76条の2・第76条の3・第164条第1項・附則第5条第6項」

    第76条の2第1項は、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、その相続により所有権を取得した者は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」と定め、後段で「遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。」とする。第2項は、法定相続分に応じた登記がされた後に遺産の分割があったときは、その分割で相続分を超えて所有権を取得した者は「当該遺産の分割の日から三年以内に」登記を申請しなければならないとする。第3項は「前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。」第76条の3(見出しは「(相続人である旨の申出等)」)第1項は、申請義務を負う者が登記官に対し、相続が開始した旨と自らが相続人である旨を「申し出ることができる」とし、第2項は第76条の2第1項の期間内にその申出をした者は申請義務を「履行したものとみなす」とする(括弧書きで「当該申出の前にされた遺産の分割によるもの」は除く)。第4項は、申出をした者がその後の遺産分割で所有権を取得したときは「当該遺産の分割の日から三年以内に」登記を申請しなければならないとする。第164条第1項は、第76条の2第1項・2項または第76条の3第4項の「規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する」とする。施行前に開始した相続に及ぶ根拠は附則(令和三年四月二八日法律第二四号)第5条第6項で、「知った日」を「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と読み替えると定める。

    適用範囲:全国。2026-10-05に e-Gov法令データAPI(法令ID 416AC0000000123)で取得して照合。law_revision_id は 416AC0000000123_20260624_508AC0000000046。/確認日 2026-10-06

    注意:★期間の起点は亡くなった日ではなく「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」。/★期限は起点の違う二本立て(第1項=知った日から3年、第2項=遺産分割の日から3年)。/★相続人申告登記(第76条の3)をしても、その後の遺産分割による登記義務は残る(第4項)。/「十万円以下の過料」は上限で、過料は刑罰の罰金ではない。/当サイトは読者に登記手続を自分で行うよう勧めない。

  2. 法務省 民事局「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

    「相続登記の義務化は、令和6年4月1日から始まりました。」「ただし、令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります。」とし、それらは「令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります」と案内する。過料までの流れは3段階で、(1)登記官が義務違反を把握した場合に登記をするよう催告する、(2)期限内に登記がされなければ登記官が裁判所に申請義務違反を通知する(ただし登記官が「正当な理由」があると認めた場合は通知しない)、(3)通知を受けた裁判所が要件に該当するか否かを判断して過料を科する旨の裁判を行う。「過料は、10万円以下の範囲内で裁判所において決定されます。」また登記官が催告を行う端緒は限定されており、「登記官は、相続人が不動産の取得を知った日がいつかを把握することは容易ではありませんので、次の(1)又は(2)を端緒として、義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、申請の催告を行うものとしています。」として、(1)遺言に基づく移転登記を申請したがその遺言書に別の不動産も記載されていたとき、(2)遺産分割の結果に基づく相続登記を申請したがその協議書に別の不動産も記載されていたときを挙げる。「正当な理由」については「相続登記の義務の履行期間内において、次の(1)から(5)までのような事情が認められる場合には…」として、相続人が極めて多数で戸籍関係書類等の収集に多くの時間を要する場合、「遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合」、義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合、配偶者からの暴力の被害者等で避難を余儀なくされている場合、経済的に困窮して費用を負担する能力がない場合の5つを挙げ、「これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事情に応じ」認められることがあるとする。遺産分割をしていない場合は「全ての相続人が法定相続分の割合で不動産を取得(共有)した状態となる」ため各相続人に義務があり、「遺産分割が調い、その不動産の所有者があなた以外の者となった場合には、あなたの義務はなくなります」。相続人申告登記については「申出をした相続人についてのみ、相続登記の義務を履行したものとみなされます」とし、留意点として「もっとも、遺産分割がされた後にこれに基づく登記をする義務を相続人申告登記によって履行することはできないことや、不動産についての権利関係を公示するものではなく、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には相続登記をする必要がある」ことを挙げる。相談先は「お近くの法務局(登記手続案内(予約制)を実施中)や、登記の専門家である司法書士・司法書士会等に御相談ください。」令和7年3月27日時点。

    適用範囲:法務省のQ&A。令和7年3月27日時点。/確認日 2026-10-06

    注意:★「正当な理由」の5つは「相続登記の義務の履行期間内において」という条件つきで、かつ網羅列挙ではない(「これらに該当しない場合においても」とある)。/★過料を決めるのは裁判所。登記官が催告する端緒も2つに限定されている。/★相続人申告登記は「遺産分割がされた後にこれに基づく登記をする義務を相続人申告登記によって履行することはできない」——この限定を落とすと使い方を誤る。/★権利関係を公示するものではないため、売却・抵当権設定には相続登記が必要。

  3. 法務局(法務省)「相続登記ハンドブック」

    添付する戸籍の証明書として「被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの経緯が分かる戸籍の証明書」と「遺産分割協議の当事者である相続人全員の戸籍の証明書」を挙げる。遺産分割協議書については、相続人が印鑑証明書と同じ印(実印)を押し「その印鑑証明書(注①)を各1通添付します(注②)。」とし、同ページの(注②)で「遺産分割協議を行った相続人(ただし、登記申請人である相続人を除く。)の印鑑証明書を各1通添付します。」と定める。住所を証する書面として「相続人(土地・建物を相続した人)の住民票の写し(市区町村が発行した証明書の原本)」を挙げる(住民票コードを記載した場合は省略できるとの記述もある)。登録免許税については刷り20ページに「登録免許税額は、原則として、課税価格に税率(相続による所有権の移転の登記の税率は1,000 分の4)を乗じて計算した額で、その計算した額が1,000 円に満たないときは、1,000 円となります」とある。「法務局(登記所)では、遺産の分割の方法や、遺産分割協議書の作成についてのお問合せ・ご相談にお応えすることができません。」と明記する。

    適用範囲:法務局が公開している相続登記の手引き(PDF)。/確認日 2026-10-06

    注意:★印鑑証明書は「相続人全員」分ではなく、注②により登記申請人である相続人を除く。/★遺産分割の中身の相談先は法務局ではない(法務局は登記手続の案内まで)。/当サイトは手続の代行や個別の判断をしない。

  4. デジタル庁(e-Gov法令検索)「登録免許税法 別表第一第一号(二)イ・第19条/租税特別措置法 第84条の2の2第2項」

    登録免許税法別表第一の第一号(二)イは、相続による所有権の移転の登記について課税標準を「不動産の価額」、税率を「千分の四」と定める(売買などその他の原因による移転の登記はハで千分の二十)。同法第19条は、別表第一の税率を適用して計算した金額が「千円に満たない場合には、当該登記又は登録に係る登録免許税の額は、千円とする。」と定める。租税特別措置法第84条の2の2第2項(法令ID 332AC0000000026)は、令和9年3月31日までの間に受ける土地の相続による所有権の移転の登記について、課税標準たる「不動産の価額が百万円以下であるとき」は登録免許税を課さないと定める。

    適用範囲:全国。2026-10-05に e-Gov法令データAPI(法令ID 342AC0000000035/332AC0000000026)で取得して照合。/確認日 2026-10-06

    注意:★租税特別措置法の非課税は対象が「土地」で、しかも令和9年3月31日までの期限つき。建物は対象ではない。/当サイトは個別の税額を計算しない。

  5. デジタル庁(e-Gov法令検索)「民法 第249条・第251条・第252条(共有)」

    第249条第1項「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」第3項「共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。」第251条第1項「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。」第252条第1項は、共有物の管理に関する事項(第251条第1項の変更を加えるものを除く)は「各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。」第3項「前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」第5項「各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。」第251条第2項と第252条第2項は、他の共有者を知ることができないときや所在を知ることができないとき、また相当の期間を定めて催告しても賛否が明らかにされないときに、裁判所の裁判によって残りの共有者で決められる道を定める。第252条第4項第1号には「樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年」とある(共有物に設定できる賃借権等の存続期間の上限)。これらは令和3年法律第24号による改正後の条文で、令和5年4月1日施行の版から確認できる。

    適用範囲:全国。2026-10-05に e-Gov法令データAPI(法令ID 129AC0000000089)で改正前後の版を取得して突き合わせた。/確認日 2026-10-06

    注意:★第251条第1項の括弧書き「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」まで含めて読む必要がある。/★過半数は頭数ではなく「持分の価格」。/★第252条第3項により、現に庭を使っている共有者に特別の影響を及ぶときはその承諾が必要。実家に相続人の一人が住んでいる場合に直結する。/★第252条第4項第1号の「十年」は賃借権等の存続期間の上限で、伐採の可否の基準ではない。/庭木を切ることが「変更」か「管理」か「保存」かは、条文だけでは決まらない。 当サイトは判例・裁判例を確認していないため、個別の当てはめは書けない。

  6. デジタル庁(e-Gov法令検索)「不動産登記法 第123条・第143条・第148条」

    123条1号は筆界を「表題登記がある一筆の土地…とこれに隣接する他の土地…との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。」と定義する。123条2号は筆界特定を「筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)」と定義する。143条1項は筆界特定登記官が「登記記録、地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容、対象土地及び関係土地の地形、地目、面積及び形状並びに工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して」筆界特定をすると定める。148条は「筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失う。」

    適用範囲:全国。2026-09-29 に e-Gov法令データ(法令ID 416AC0000000123)から取得して照合した現行版。/確認日 2026-09-29

    注意:筆界特定に所有権を決める効力があるとは条文のどこにも書かれていない。 148条により筆界特定は最終決着ではない。123条2号の括弧書きにより、位置が1本の線で出ないことがある。